話題だったので

ミーちゃんハーちゃんな理由だが、面白いと評判だったので手に取った。まだ単行本で、映画化の話も微塵も出てない頃、SF好きの友人に勧められた記憶もある。その頃から読んでいた人は、今の話題ぶりにきっとニコニコ笑顔で居ることだろう。私は映像作品(映画・アニメ・ドラマなど)が苦手なので、劇場で本作を観るつもりはないけれど、公開後はネタバレが流れてくるだろうから小説派もさっさと読め! というSNSの圧に屈してしまった。

シンプルに、サイエンス・バディもののSFとして面白い

最後まで読み終えていだいた感想はコレ。世間の評判から、最後にとんでもないどんでん返しが控えているのかと思ったが、そういう類ではなかった。(個人的には)あの終わり方はバッドエンド寄りだとおもうのだけれど、ほかの人はどう感じるかしら。

それでもやはり、ロッキーとの友情には胸が熱くなるものがあった。ヘイル・メアリー号の中で幾度も襲い来るピンチに、それぞれが自身の命を擲つ覚悟で一方を助けるシーンは手に汗握ったし、そこに至るまでに築き上げた双方向のリスペクトにも納得感があった。ロッキーはエンジニアとして、グレースはサイエンティストとして素晴らしい手腕を発揮することで、互いの「欠け」を補いながら危機を乗り越え、信頼を築く。ロッキー(エリディアン)は相対論を知らなかったから、エリドとタウ・セチを往復してもなお余裕のある燃料(アストロファージ)を蓄えていた、だからヘイル・メアリー号に余った燃料を渡すことができる──とグレースに希望を持たせるのもウマいな、と感心した。凹凸バディだからこその筋書きだ。

ストラットは最後まで

嫌なヤツだった。勿論、彼女が居なければプロジェクト・ヘイル・メアリーは起動しなかったのは間違いない。道中はどうあれ、最終的には地球人類を救った英雄にもなれてしまう人物だとはおもう。けれど、ことグレースの立場になれば、本当に嫌なヤツのまま終わってしまった。近年のライトなノベルだったら、あとでグレースが報復する流れになるんじゃないかな。そうでなくても、胸がすくような展開を心のどこかで期待していたから、この点はちょっと残念だったかもしれない。仮にそんな展開が書かれたとしたら、それはそれで野暮になりそうだけれど……。

どうしても比較してしまう

面白い作品であることは間違いない。しかし、事前情報によって自分の中でハードルを上げすぎてしまった感がある。私は、ジョージ・オーウェルの『1984年』がSFの史上最高作だと信じている。それには及ばないかな、という感想。勿論、両者は作品の方向性がまるで違うし、わざわざSFという括りを作ってその中で順序をつけるというのもナンセンスな話だが……。

序盤で述べたように、科学系あるいはバディものとして読むのであれば最高に面白いとおもう。私は理科系の理系ではないから、科学部分は正直流し読みだったのだけれど、その部分をきちんと理解できる人なら適度にツッコミを入れつつ楽しむこともできそうだ。